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第3回 受賞作と講評

第3回 受賞作と講評
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大賞:『クイックドロウ』シュウ・エジマ

大賞:『クイックドロウ』シュウ・エジマ

特別賞:『エリッサ様、前方に敵艦を発見しました』』わかたけ まさこ

特別賞:『エリッサ様、前方に敵艦を発見しました』』わかたけ まさこ

総評

総評

第3回を迎えた「ゴールデン・エレファント賞」は、シュウ・エジマ氏の『クイックドロウ』に授与されることとなりました。また、特別賞としてわかたけまさこ氏の『エリッサ様、前方に敵艦を発見しました』が選出されました。

今回、第3回「ゴールデン・エレファント賞」には過去最多の260作近いご応募をいただきました。回を重ね応募数が増えるごとに力作がしのぎを削るようになり、結果として第一次選考から大変な激戦となりました。その中で最終選考まで勝ち残った作品は5作品。審査は白熱し、米・中・韓・日、4ヶ国の選考員それぞれの一歩も退かない意見がぶつかり合った結果、『クイックドロウ』が大賞に輝きました。

――「ゴールデン・エレファント賞」は"国際的に活躍できる日本の新人作家を発掘する"ことを目的として設立された小説アワードです。それは"国境を越えるエンターテインメントを発信する"という側面を持っています。世界にあまねく「面白い物語が読みたい」という率直な声が、新たな名作の誕生を待っています。『クイックドロウ』は、この声に充分に応える力のある作品であると信じます。

また惜しくも大賞には届かなかったものの、『エリッサ様、前方に敵艦を発見しました』が特別賞となりました。ジャンルとしては「ライトノベル」の範疇の作品であり、当アワードにてこの方向の受賞作は過去ありません。しかし、今多くの読者の支持を集める「歴史ラノベ」の作品として非常に読み応えがある、とのことで特別賞の運びとなりました。

まったく方向性の違う作品が大賞・特別賞を勝ち取った第3回「ゴールデン・エレファント賞」。どちらも、エンターテインメントの可能性をさらに追求した作品として、受賞にふさわしいと確信しております。

「ゴールデン・エレファント賞」運営事務局

最終選考委員による選評

最終選考委員による選評
大賞:『クイックドロウ』シュウ・ヤジマ

「現在の文芸市場からかけ離れている――」最終選考委員たちから、次々とこうした意見が発せられたこの『クイックドロウ』は、もどかしいほどに昨今稀有な正統派"活劇"小説である。しかし、それでも、大賞を授与するに値する力を持った作品である、との結論に至った。

作品の完成度は非常に高い。物語は一見どこにでもありそうな事件で端緒が開く。舞台はアメリカの西海岸から西部の荒野へと目まぐるしく変転してゆくこととなる。その中で、作者は麻薬を運ぶ日本人女性・川渕裕子こと通称ブッチと、謎の少年・早乙女モンドとのロードムービー的逃亡劇を軸に、アメリカ諜報機関同士の軋轢、ロサンゼルスで起きた一家殺害事件の核心に迫る刑事・クワンなど、様々な人間の欲と因縁が絡み合う複雑な世界観を見事に描ききっている。アクションに次ぐアクション、これでもかと立ち昇る黒煙、相手を抹殺せんと対峙し合う登場人物たち。そこへ絡む謎の暗殺者「カタナ」の血と因縁……。ハードボイルド・アクションとして、第一級レベルにあると言っていい。一度読み始めるや、ラストシーンにたどり着くまで、作品世界から抜け出せなくなる中毒的な魅力がある。

"今"の読者感覚を問う選考委員たちに、それでも「この作品を大賞に」と決定させたのは、「オーラを感じる」とまで言わしめた作品としての魅力である。圧倒的な筆力、緻密な構成力など、明らかに他の作品より大きく抜きん出ていた。

またこの作品のもう一つの特徴は、高度に「翻訳的」な小説である点だ。これだけ緻密にアメリカのライフスタイルや社会規範、そして人間的な葛藤を描写し、エンターテインメント性の高いプロット構成を日本語で書きながらも、ほぼ直訳で英語作品として翻訳したとしても、作品の魅力が損なわれることはないだろう。

ワールド・ワイドな展開にチャレンジしたい、「メイド・イン・ジャパン」のエンターテインメントを世界に発信したいという意欲を掻き立ててくれる作品だ。作者の今後の活躍に、強く期待したい。

川渕裕子こと通称ブッチは、米国でコカインを運ぶ仕事の途中、大きなトラブルに見舞われていた。500万ドル相当のコカインを輸送先の街へ運ぶ途中、警察やFBI、CIAその他組織までもがそれを奪おうと追跡してきたのだ。旅の途中で出逢った行きずりの少年・モンドを連れて逃亡を続けるブッチ。逃げながら、彼女はある事実に気づく。狙われているのはブッチのコカインではなく、モンドの方ではないのかと―― 。一方、ロサンゼルスでは残忍な一家殺害事件が起きていた。しかし長男の遺体が見当たらない。事件を追う刑事・クワンはその背後に「カタナ」と呼ばれる正体不明の暗殺者の存在に気づく。その後に続くさまざまな事件にも付きまとう暗殺者「カタナ」とは一体誰なのか。そして、ブッチとモンドの逃亡劇の行方は? 見えない糸で繋がるいくつもの事件は、どう決着を迎えるのか……!? 本格ハードボイルド・アクション・ミステリー!

シュウ・エジマ

1976年生まれ 会社員
※ 応募時の筆名「シュウ・ヤジマ」を出版に際し「シュウ・エジマ」に改名しました。

受賞コメント

エンターテインメントを追求する「ゴールデン・エレファント賞」の大賞に選ばれ、大変光栄です。『クイックドロウ』はひたすら読む人に楽しんでもらいたいと願って書き上げました。この物語が多くの方に読んでもらえるという事実に、今からワクワクしています。この作品を大賞に選んでいただき、世に出る機会を与えてくださった選考委員の皆様に心より感謝いたします。

特別賞:『エリッサ様、前方に敵艦を発見しました』』髙橋 忍

この作品を「ゴールデン・エレファント賞」受賞作として推すか否か、随分と選考委員の票が割れた事をここで明かしたい。総評でも書き記したとおり、作品としては「ライトノベル」の範疇のものであり、過去「ゴールデン・エレファント賞」受賞作にこのジャンルの作品は皆無だ。当アワードとは、方向性が違うのではないか――。選考委員たちからこのような声が上がったのも無理はない。

しかしそれでも特別賞を勝ち得たのは、まさにこの作品の主人公「エリッサ様」のヒロインとしてのパワーである。一国の王女であり、数万の海軍と艦隊を率いる美少女提督の魅力に白旗が上がった。キャラクターの多彩さ、そして「歴史ラノベ」としての面白さ。受賞の理由を問われれば、この2点に尽きる。

読み出せばこの分野の作品としての醍醐味を、存分に味わうことができる。とにかくテンポのいい語り口とセリフ回し。主人公だけでなく、彼女を取り巻く男たちの魅力的な人物造形もお手の物である。これらが、緻密に描き込まれた歴史的背景に溶け込み、躍動しているのがこの作品の最大の魅力であると言える。

作品舞台は紀元前9世紀のフェニキア。古代海洋国家の歴史が強いタッチで描かれている。多くの人にとってはなじみが薄いであろう時代を、「口よりも拳」「ひたすら高慢に」をスローガンに掲げるごとく、実在した古代の女傑ヒロインで引っ張っていった点が痛快だ。艦隊がぶつかりあう戦闘シーンの臨場感もさることながら、歴史物としての構成が堅固で、作者の下調べの綿密さが充分に伺える。その歴史的な知識を、物語の世界に落とし込んでいった手腕を評価したい。

「読んで大きなカタルシスが得られる」と評されたこの作品、ある意味、実験的とも言えるかもしれない。しかしこの「ライトノベル」も日本が発信するエンターテインメントのひとつの潮流であると信じ、特別賞となった次第である。

あらすじ

紀元前9世紀、蒼き海原に囲まれる海洋都市国家・テュロス ―― 。ここに「国家創設以来の美少女」と呼ばれる巫女姫がいた。いま だ15歳、テュロスの若き王女・エリッサである。エリッサは海を愛し、そして海からも愛されていた。その証拠に、彼女は、あるとんでも ない才能の持ち主だった……。すでに叔父との結婚を約束されていたエリッサは、思い出作りにと家出同然でキプロス行きの戦艦隊 の一隻に乗り込んだ。そこでギリシア海賊隊の襲撃をうけ、エリッサが全艦隊の指揮を執ることになる。「総員、戦闘配置に就いて!」 エリッサの天才的な海戦術でテュロス艦隊はみごと圧勝。彼女は以来、いくつもの海戦へと乗り出してゆくこととなった。しかし、そんな 彼女に次々と試練が襲う。父王の急死、敵国からの誘拐騒動……。エリッサはどのように危機を乗り越えてゆくのか? 痛快美麗な ヒロインが大活躍する、古代歴史ファンタジー!

わかたけ まさこ

1967年生まれ 主婦
※ 応募時の筆名「高橋 忍」を出版に際し「わかたけ まさこ」に改名いたしました。

受賞コメント

この度は、特別賞に選んで頂き、ありがとうございました。正直なところ、最終選考に残れただけで、かなり満足しておりましたので、今でも信じられない思いです。拙作に目を通して頂いたすべての方に感謝致します。本当に、ありがとうございました。

  • 第3回受賞作
  • 2次選考通過作品
  • 1次選考通過作品
主催:ゴールデン・エレファント賞運営委員会
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