HOME > 第4回 1次選考通過作品

2011年度(第2回) 選考状況

2011年度(第2回) 選考状況

1次選考通過作品 順不同

1次選考通過作品 順不同
  • 『将軍の象』高田 在子(たかだ ありこ)
  • 『天国は激しく襲われる』秦野 重武()
  • 『世界の果てで失われた物語』弓木 暁火(ゆみき あきひ)
  • 『虚栄のカルテ』志摩 峻(しま たかし)
  • 『七つの光と七つの国』早川 かな
  • 『山の奥の海』串 弥太郎(くし やたろう)
  • 『良いときも、悪いときも(よいときも、わるいときも)』桜木 ゆず(さくらぎ ゆず)
  • 『鳥類の時間』とよかわ さとこ
  • 『鬼船(おにぶね)』水月 彩人(みづき あやひと)
  • 『水兵リーベ僕の艦(すいへい りーべ ぼくのふね)』 時武 ぼたん(ときたけ ぼたん)
  • 『シスト』天利 礼二(あまり れいじ)
  • 『ガンテツ』山田 英樹
  • 『ブラックスノー -正義にまつわる動物たちの物語-』白河 光太(しらかわ こうた)
  • 『蝶の舞うリング』安西 景子(あんざい けいこ)
  • 『ジェニーバロック』坂本 四郎(さかもと しろう)
  • 『沙場の虎穴-班超の刺客(さじょうのこけつ はんちょうのしかく)』高桐 遊(たかぎり ゆう)
  • 『Steal The STEEL』齋藤 利夫(さいとう としお)
  • 『パーフェクト・ドラッグ』二藤 遙子(にとう ようこ)
  • 『純白の封鈴師(じゅんぱくのふうりんし)』白原 かな(しらはら かな)
  • 『ゲートブレイカー』ゲートブレイカー(はしもと たつや)

将軍の象 / 高田 在子(たかだ ありこ)

page top
選評
江戸時代の実際の史実をもとにした作品。薬園に勤める荒子を主人公とし、通常とは違った視点の時代物で楽しめる。また要所要所に当時のままならない恋愛模様や、時代劇ならではの戦闘シーンもあり臨場感もある。多少文面が硬めのため、読みなれていない人には辛い可能性も。

天国は激しく襲われる / 秦野 重武

page top
選評
いわゆる「マトモ」な生き方の人間は一人も出てこない、アンダーグラウンドの空気が全編を支配した小説。それぞれの刹那的な欲求に身を任せる登場人物らが、2005年という舞台設定とあいまって、ドライな世界観を作っている。主人公らとヤクザの感覚のズレや、やる気の無いチンピラの受け答えには妙な愛嬌とリアリティがあって、飽きさせず面白い。

世界の果てで失われた物語 / 弓木 暁火(ゆみき あきひ)

page top
選評
口語体による文章はやや取っつきにくさを感じさせるが、その生き生きとした語りにはすぐ引き込まれる。第1章、第2章においては物語の豊饒な魅力を、構成が十二分に支えている。だからこそ、三人称視点にした第三章がややパワーダウンしているのが残念。構成を生かすためには、第3章で「再1章」「第2章」の出来事をひっくり返すくらいの真実が暴かれるといったインパクトが欲しかった。

虚栄のカルテ / 志摩 峻(しま たかし)

page top
選評
物語の胆である「クレジットカード」をめぐる展開は偶然に頼る要素が多いとはいえ、文章が丁寧なので特に不自然さを感じることはない。ラストの真犯人が明らかになるまでの展開も含め、見事にミステリーとして成立している。また佐智代や佐智子といったキャラクターがきちんと説得力を持って描かれているのも見事。その一方で伴俊作をはじめとする警察の描写には違和感があった。

七色の光と七つの国 / 早川 かな(はやかわ かな)

page top
選評
『イメージ』という抽象的な設定だが、それぞれの動物ごとに納得できるキャラクターとして作っており、アイデアが面白い。登場人物が多いが、それぞれきちっとキャラクターも作られているように感じる。ただ長いわりに後半があっけなく終わるため、全体のバランスは要再考。

山の奥の海 / 串 弥太郎(くし やたろう)

page top
選評
歴史小説としての語彙の豊富さ、文体の完成度もさることながら、主人公の老人・又兵衛が、実に愛すべきひょうきんさで微笑ましい。また、敵役となる執政・津田の妙に現代的な語りや、飯田の機械のような冷徹さもキャラが立っており、陰惨になりかねない話を救っている。読後感もよい。

良いときも、悪いときも / 桜木 ゆず(さくらぎ ゆず)

page top
選評
現代日本では一般的に知られていないロスコー・アーバックルの妻・ミンダが主人公とあり、内容だけで充分読ませる作品。文章の完成度も高い。全編にわたり、ロスコーに嫌気がさしているミンダという印象が強すぎるので、冒頭から結婚当初にかけての二人の関係や愛といった部分がもう少し描写されると、より主人公への移入がしやすいのでは。エピソードも、小説としてより肉付けが必要か。

鳥類の時間 / とよかわ さとこ

page top
選評
確実に訪れる別れを内包しながらも愛を紡ぐというのが中心的なテーマだとしても、第四話は性行為の描写が多すぎる。この段階で結末は明らかであり、蛇足の感が否めない。色彩が非常に鮮やかに、かつ効果的に使われている。登場人物たちの造形が個性豊かなので、第二話でアカモズに焦点を当てたショートストーリーが展開されたように、他の登場人物にもこのような章があればよかった。

鬼船/ 水月 彩人(みづき あやひと)

page top
選評
エンターテイメント性の高いライトな歴史ファンタジーが好きな人には必ずウケるであろう作品。キャラクターが生き生きとしており、テンポがいい。会話の口調も、うまく歴史感を出しつつあくまで読みやすい文体に仕上げてある。幕府と阿蘭党の対比にはリアリティがあり、信之助が若君・兵庫と意気投合するシーンにも納得。また、盛りだくさんの内容を読みやすくまとめて話を展開させる力量は素晴らしい。

水兵リーベ僕の艦 / 時武 ぼたん(ときたけ ぼたん)

page top
選評
作中の専門用語の取扱、説明の仕方にもうひと工夫必要があるが、小さな事件の積み重ね方やそれに伴う作品構成がうまい。また、小さい事件ではあるが、船上ゆえに容疑者が絞られること、動機に関することなど、舞台設定が生きた物語作りがされている。

シスト / 天利 礼二(あまり れいじ)

page top
選評
パンデミックが物語のメインだがパニック物には陥らず、緊迫した展開を良いモチベーションで持続している。重いテーマが立て続けに展開されるが、筆力がありぐんぐん読み進められる。最後のさくらの前向きな視線が描かれたところで気持ち良く終わってほしかったが、エピローグが長沼医師のシーンで閉じられるのが後味が悪い。前の爽やかとも思える後味がかき消されてしまいもったいない。

ガンテツ / 山田 英樹

page top
選評
ややコミックめいた内容であり、文章も決して上手とはいえないが、物語としての面白さが頭ひとつ飛び抜けていた登場人物が多い分、登場するやや典型的なキャラクターをうまく使っているのは評価したい。ヒロインの七海の描写が少ない点や、異世界人が実は未来人であったというサプライズの唐突さ、全体的にエピソードが未整理といった欠点はある。だが、それを補って余りある魅力がある。

ブラックスノー -正義にまつわる動物たちの物語- /白河 光太

page top
選評
それぞれの特質と美徳を持つ動物たちに仮託して、正義と社会についての対話がなされる寓話。あくまで児童文学の形式をとりながら、皮肉めいた言い回しを混入してくるスタイルは洗練されている。単に「ブラック」なファンタジーとしても面白く、良質。

蝶の舞うリング / 安西 景子(あんざい けいこ)

page top
選評
ボクシングへの熱情の高まりとともに華恵への恋心を意識していくという周助の内面の描写に好感が持てる。周助の施設時代の知り合いである亮一やあずさの登場がやや唐突だったことと、周助がボクシングに出会ってからの時間が飛び飛びになっていることを考えると、もう少し長い作品にして細部が埋っていればよかった。そうするだけの魅力が、この作品に書かれた人物たちには十分ある。

ジェニーバロック / 坂本 四郎(さかもと しろう) 

page top
選評
狭義のエンターテインメント小説という枠組みを取り払うような力作。古今東西の性や美に関する哲学問答の繰り返しは多少の読み辛さもあったが、貫徹したテーマに沿った非常に読み応えのある作品として評価できる。秀一への周囲の理解は、ややご都合主義的に思えた。狭いコミュニティの中で恵まれた環境にいる天才芸術家という、やや一般性を欠いた登場人物が出来上がってしまってもいる。

沙場の虎穴-班超の刺客 / 高桐 遊(たかぎり ゆう)

page top
選評
高い水準でバランスのとれた歴史小説。将才があっても、文人でないことで家名に引け目を感じる班超、麗人だがガサツな驪基爾、小物だがしぶとさのある田慮と、魅力的なキャラクターを揃えており、飽きさせない。

Steal The STEEL / 齋藤 利夫(さいとう としお)

page top
選評
上質なミステリ。護衛艦内という密室にとじこめられた主人公たちの焦りや不安をうまく表現できており、限られた時間の中、上層部の政治的かけひきに憤りを感じる春名の心情も理解しやすい。事件解決の突破口となった矢野通信士の密室殺人に対し、慶子がそれを思いつくに至った手がかりがないため、少々唐突な印象を受けた。

パーフェクト・ドラッグ / 二藤 遙子(にとう ようこ)

page top
選評
非常に面白い。世界で対立し合うはずの宗派の最終地点は同じところであり、そこに唯一辿り着けたのは少数民族の血筋をもつ主人公PD(サラジュ)とソルであったとする世界のスケールの大きさと、一方で対立する大衆や警察組織、宗教、国家間の卑小さを見事に描き切った。イセキとPDの恋愛に行くのかと思いきや、敵対するPDとソルに同じルーツを持たせたりと、ひと筋縄ではいかない壮大な物語だった。

純白の封鈴師/ 白原 かな(しらはら かな)

page top
選評
前半、少し必要な描写が足りないような印象があるので、読み始めは少しつらいかもしれないが、中盤以降は、それなりに読ませてくれる。ただし、登場人物(椿)のキャラ造形(台詞や内面)が若干ぶれている印象もあり。なお、共感覚を扱っているが、このテーマはそろそろ使い古しになっていそうな感じがする。女性読者受けしそうな作品。

ゲートブレイカー / 橋本 龍弥(はしもと たつや)

page top
選評
構成力、リーダビリティがそこそこ高く安定した印象。ラストが思ったよりもさっぱりしていること、一部のキャラづけが少し弱いところが気になるところではある。ただし、全体として読ませてくれる作品。
新刊予告
Information 一覧をみる